2022-01-01から1年間の記事一覧

オスカー・ワイルド『ドリアン・グレイの肖像』感想

光文社古典新訳文庫、仁木ひとみ訳、キンドルアンリミテッドにて 概要 ドリアン・グレイ:美しい若い貴族 バジル・ホールワード:新進気鋭の純粋な画家 ハリー・ウオットン:上二人より年上の、皮肉家ないし偽悪家 この3人を主要人物とする象徴主義的傾向の…

アンドレ・ジッド『狭き門』感想

キンドルアンリミテッドにて ファンタズム(幻想)の中で挫折する恋愛。それは思春期ころから始まり、相思相愛であるにも関わらず青年期前半で終わる。 冒頭ではヒステリーの叔母などいくらか他者性をもつ第三者が登場するが次第に主人公ジェロームとヒロイ…

松本卓也『人はみな妄想する』感想

基本的な語彙についての知識を前提としているラカンの入門書。まったくラカンのことを知らない人はワンクッションはさんでからのほうがよいと思われる。 前提 DSM(精神障害の診断と統計マニュアル)を偏重する業界への反駁を動機としてラカンの思想的変遷を…

D・R・クーンツ『ベストセラー小説の書き方』を読む(アクション・登場人物・文体)

アクション プロット:何が起こるか アクション:それがいかに起こるか。 特に初心者はアクションが少なすぎるより多すぎるほうがよい。 殺人、裏切り、航空機事故などプロット上の重大事件は基本的にアクションシーンとして描写したほうがよい。理由なく伝…

D・R・クーンツ『ベストセラー小説の書き方』を読む(プロット他)

先人に学び初心者は原理原則に従い書け。読者のことを適切考えろ。継続せよ。原則を外すのは経験を得てから。と真っ当なことを言ってるが、次作から具体例を持ってくるのでわかりやすい。少し古い米国のことにつき出版戦略的なところは参考まで 前提となる方…

P・オースター『幻想の書』感想

妻子を飛行機事故で失った男が、失踪していた無声映画の喜劇俳優を追う中で自らの生を再び見出す話 読書体験の寓意 芸術は何かについてのものではあってはならない。芸術は芸術そのものでなくてはならない。主人公は妻子を失い自分の生を見失う。その中でた…

高山宏『近代文化史入門 超英文学講義』感想

中世の終わりころから近世の英文学を非常に広範な視野から眺める。マニエリスムのやり方で様々な糸を紡ぎ合わせ驚きを与えてくれる本。 300年忘れられたシェイクスピア 優れてambiguity=両義性、多義性に富んだシェイクスピアだが、それを嫌うピューリタンの…

『一揆の原理』感想

呉座勇一著 これの前に勝俣鎮夫『一揆』を読んだ。 呉座氏のこの本はこれまでの一揆研究に付きまといがちだった左翼的イデオロギーからの解放を目指し、そのうえで現代において一揆のあり方を知る意義を捉えようというもの。 例によって読了からすこし間をお…