アクション
プロット:何が起こるか
アクション:それがいかに起こるか。
特に初心者はアクションが少なすぎるより多すぎるほうがよい。
殺人、裏切り、航空機事故などプロット上の重大事件は基本的にアクションシーンとして描写したほうがよい。理由なく伝聞など間接的に描写するのは複雑になりがちなアクションシーンを描く自信がないからではないか? アクションシーンにおいてもプロット全体における原則「主人公を徹底的に苛め抜く」を適用するとよい。ひとつ困難を解決したら更なる困難が襲い掛かるといったように。
文体の切り替え
アクションシーンを描写する際、ほかの部分と文体を変えることも効果的である。テンポを上げるため通常より1文、1段落を短くするなどといった方法が考えられる。
タイムパラドクス
実際にはほんの何秒かに起こる一連の行動が、文章にすると長たらしくなってしまうことがある。こうした場合、作家は綿密につくりあげた虚構のリアリティを台無しにする危険をおかしているといえる。というのも、読者がもし実際にはほんの一瞬のことだと気づけば、少なくとも一時的に、読者の作品や登場人物に対する感情移入が、さめてしまう可能性があるからである。ときおりわたしも、長い切れ目のない一文にさまざまなアクションを詰めこんで、読者がこの時間的なずれを感じずに読み飛ばさるように工夫してみることがある。p188
しかしこの手法をとる場合文章がリズミカルでないなどによって失敗する場合がある。
登場人物
主人公の要件
以下の5要素が本文では挙げられている。
- 高潔さ
- 有能さ
- 勇気
- 好感
- 不完全さ
わたしはより簡潔に「高潔さ(or有能さ)」「不完全さ」の2要素としてもよいと考える。3は1,2によっておおむねもたらされ、4は1,2,5によってもたらされるだろう。高潔さとはその人物を律する道徳観が矛盾なく、読者が行動原理を理解できるということで、結果の予測可能性という点で有能さで置き換えることもできるだろう。また不完全さが物語の原動力となり、かつ読者に親しみを与える効果がある。
性格描写
基本的には具体的な状況に対するリアクションで表現すること。アクションシーンにおいて道徳的ジレンマに陥らせ、その反応を描くなど。「わたしは誠実な人間です」と明言する人ほど不誠実なものはいない。
またこうした描写をするにあたり、登場人物の「身上調査書」を前もって作成してもよい。登場人物のすべてを知り尽くせば実在感が増す。但し常にこうしたものにいえることだが下準備で作った設定は本文ですべて使おうなどと考えないこと。
動機付け
しばしば荒唐無稽と評されてしまう作品はプロットではなく、登場人物の動機に原因がある。本書では以下の要素が挙げられている。
- 愛情
- 好奇心
- 自己防衛
- 金銭的欲望
- 自己再認識
- 義務
- 復讐
複数要素を組み合わせ重層化させることを推奨。登場人物の基本的性格と矛盾しないようにする。
文体
会話文
売れる小説の20~30%は会話文。時に間接話法を用いながら省略し、リズミカルに。シーンのプロット上の位置づけも考慮し、差し迫ったシーンではより素早く要点に切り込むなどする。
発話者の表示は絶対に必要なときだけにする。またその際の動詞は「言った」「叫んだ」「答えた」「主張した」など衒いのない言葉で足りる。「身震いしながら話した」「驚きの声をあげた」「躍り上がってよろこんだ」などは不要。こうした文言が必要と感じられるのであれば、会話文の描写が不十分と考えられるので再考すること。
クリシェ
決まり文句は怠惰さの証明。また決まり文句を避ける必要性を感じていてもつい出てしまうことがある。最終稿を上げるさいは改めてクリシェ退治を!
洪水の取材に行かされた新米記者のはなしだ。
何時間待っても現地からの第一報が届かないので…編集長はカンカン…やっとのことで電動タイプが動き出し…情緒的で…新聞記事にふさわしくなかった。最初の文章はこうはじまっていた。「今夜、神はジョンズタウンを裁いている。」(これに対して)編集長は打電した。「洪水はもういい、神にインタビューしたまえ」pp257-258
場面転換
物語を加速させることができる箇所、簡潔に流れるように。不要な描写を避ける。次シーンの予兆をシンコペーションのようにいれてもよい。
語りの視点
初心者は三人称で様々な登場人物の視点を借りながら描写するのが心のうごきも表現しやすくおすすめ。ただし19世紀風の作者自身の声を記すのはよそう。
まとめ
エンタメよりの視点で小説執筆を神秘めかすことなく、率直に教えてくれる良書。もちろん初心者向けの話なので、いずれ守破離と自らのスタイルを作り上げていくとよいだろう。