D・R・クーンツ『ベストセラー小説の書き方』を読む(プロット他)
先人に学び初心者は原理原則に従い書け。読者のことを適切考えろ。継続せよ。原則を外すのは経験を得てから。と真っ当なことを言ってるが、次作から具体例を持ってくるのでわかりやすい。少し古い米国のことにつき出版戦略的なところは参考まで
前提となる方針
まずこの本で著者の経験を踏まえジャンル小説作家ではなく形容詞無しの作家になることを勧めている。出版部数という経済面も考慮しているが、何より可能性を狭めてしまうことが理由として挙げられている。短期的には利益を得られることもあるが、力の限界を自ら低く制限してしまうし、他者からも先入観をもって評価されやすくなる。一方でエンタメ性はある程度確保しようという方向性である。
プロットは小説の根幹
ということになるとプロットは極めて重要である。
小説を成功させるコツのひとつは、実生活上のいろいろな経験に、ピリッときくエッセンスを加えて調理するところにある。つまりプロットの枠のなかに混沌とした現実生活をしっかりはめこむことによって、それが意味深い真実の瞬間に結晶されるのである。もしも作家が登場人物たちに全権をゆだねてしまったら、知性という冷静で確実な案内人なしに、作品を書くことになる。その結果は、現実の世界に起こる多くのできごとと変わらぬ、形も意味もない小説ができあがり、そんな小説が多くの読者をがっかりさせるのは目に見えている。p77
登場人物、テーマ、文体も重要な要素であるがまずプロットという骨格をしっかりさせる必要がある。
プロットを組み立てる際現実のできごとを参照するのは構わないが、現実は小説も奇なりが許されるのは現実が現実である故である。小説の帰結は必然的であることが必要。あるいは偶然が必然と一致する必要がある。プロットは骨格であるとともに心臓でもある。己の実存を賭して組み立てよ。また本文執筆にあたるのは完全にアイデアが固まってからとすることは必ずしもない。
書き始め
タイトル
まずタイトルをつけてみる。キーワードを一つ決め、形容詞や名詞、動詞とつなげる。その際相矛盾するような語を結合させるとインスピレーションがわきやすいかもしれない。ある程度の数を無心に並べてから選ぶ。今であればこのシュルレアリスト的手法を機械化してもいいかもしれない。
やはり名前をつけることでものごとが対象化され、執筆へ向かいやすくなるだろう。
冒頭の文
仮でもよいのでタイトルが決まったら今度は冒頭の書き出しにとりかかる。ここもあまり深いことは考えずインスピレーションに身をゆだねて数行打ち出してみる。そこからさらに1ページ2ページと膨らませる。これをもとにプロットを大まかでよいので作る。
冒頭の1節は①謎の提示、②登場人物への興味を呼ぶことが必要である。
例として「三銃士」「若草物語」「オリバーツイスト」が挙げられている。
対話
主要人物(ある程度魅力的なほうがよい)2人をとりあえず対話させてみる。まず人物の特徴を書き出してみる。何を失うことを最も恐れているかなど。またこれらの人物作者自身の代弁者とならないようにする。
魅力的な書き出しとは
- アクション
- 鮮烈なイメージ(予兆)
基本的には動きがあったほうがいいだろう。そうでなければ1語もしくは2語程度で言い切れる強い語もしくはイメージを示し、それによって事件などをほのめかすとよい。
時限性をもたせ切迫感を与えてもよい。
リアリティ
超能力者など非現実的なものを出すときはその存在に懐疑的な人物を登場させる、超能力を得るには代償を払っていることを示すなどしたほうがよい。現実にあるものについての細部は全体のグルーブ感に配慮する必要があるが、しっかりと調べるほうがよい。調べたことをすべて使おうとしないこと。基本的にはうまくアクションのなかに溶け込ますこと。
主人公は徹底的に苛め抜くこと。すべては必然性のもと進行させ、最後には主人公が成長する。
(続く)