安田峰俊「『低度』外国人材 移民焼き畑国家、日本」感想

例によってキンドルアンリミにて。

現代の奴隷制と名高い技能実習制度で来日した外国人たちを追う。

かつて中国人が主に実習生として日本に来ていたが中国の経済発展とともにベトナム人がメインストリームとなった。日本に来た彼らベトナム人の事例を主に紹介してくれる。彼らは単純に哀れで狡猾な日本人に搾取される対象ではない。時にたくましく、愚かな人間である。同じベトナム人からしても共産圏の教育や情報の不足からか、知的好奇心に薄く、行く先を自ら考える力をもたないと感じるようなものもいる。

たしかにこの世は弱肉強食、それはごもっとも。しかし中国人にとって日本が魅力的でなくなったように、いずれベトナム人にとっても日本は魅力的でなくなるだろう(現時点で魅力を感じない、実際に来て感じなくなった人も多い)。情弱をだまして搾り取る商売は短期的にはうまいかもしれないが、未来はない。新たな価値を市場に提供できないものはいずれ退場するしかない。

あとがきでは著者の率直な感想が述べられる。接触頻度が高い対象には好意をいだきがちだということ。日本という国が魅力的ではなくなってきていること。相対的に自国より金が稼げるから来る。そうした外国人が増えている。それは日本に固有の魅力が存在していないということもあるし、個別の対象をきめ細かく見つめることができる感受性を持つような人間はより魅力のある場所にいきがちだということを示している。

この国は順調にいけばますます経済的に衰退するだろう。それだけではなく文化的にもいっそう魅力がなくなっていくのではないか。10年、20年後この国がどうなっているのだろうか。

国の心配をする前に己の身を心配をせよと言われればそのとおり、日々精進。