イェスパー・ユール『ハーフリアル』を読む(Chap.3 後編)
楽しいルール―興味を引く選択と思考の美的感覚
シド・マイヤー「ゲームとは、興味を引く選択肢の連鎖だ」
興味を惹く選択肢とは
1.個々の選択肢はどれも最善であってはならない。
2.個々の選択肢は、良さあの点で互いに同等であってはならない。
3.プレイヤーが当の選択肢をよく把握したうえで選択することができなければならない。 p.123
実践による上達―プレイヤーのレパートリー
ペーター・フレンシュによると実践を通じた作業遂行能力の向上を4種仮定している
a)作業の実質的な構造が質的に変化
b)個々の作業遂行効率の上昇
c)一連の作業遂行効率上昇
d)これらの組み合わせ
進行―プレイヤーのレパートリーに働きかける
上記のc(レパートリー化、チャンク化)について
パズルゲーム例えば『チューチューロケット!』ではステージの進行に従いこれをうまく利用している。即ち初期のステージでは単純な要素の学習→レパートリー化→既存のレパートリーを囮とした新たなレパートリー学習の要求といった流れ
創発―ひとりでに生まれる挑戦課題
チェスのような創発型ゲームではこうした囮のレパートリーを引き出すような局面が買ってに生じたり、相手プレイヤーが意図的に仕掛ける場合がある。
創発的な挑戦課題の標準形
創発型ゲームが生成する挑戦課題を体系的に収集しようとする試みがいくらかある。
例えばプレイヤー間で相反する目標を与えられるパターンとして
①三すくみ:典型的にはじゃんけんさらにこれに直行軸によるユニット差別化があるとゲームはより興味深くなる。例えば移動速度と射程距離など
②自軍拠点:多くのFPS、RTS、サッカーなどで拠点や自陣がある。これにより攻撃戦略と守備戦略間にトレードオフが生じ興味深くなる
③チョークポイント:CSのDE_DUSTの例 プレイヤーがマップを知悉することで両軍が対峙しやすいポイントが明確化される。これによって裏取りなど駆け引きが生じる
しかしながらこのようなゲームデザインパターンを網羅的に収集するには限界があるし、ゲームの面白さに無関係であることもしばしばある。
挑戦課題の良し悪し
セーブ機能
当初はゲームが簡単になりすぎるとか、メタレベルにプレイヤーの意識が向くという点で非難された。しかし今となっては進行型ゲームにとっては不可欠なものとなっている。
単一の解か複数の解か
どちらが優れているかということではなく整合性の問題。プレイヤーができることと描かれている行為と実際にできる行為が一致するように実装されているか。
挑戦にまつわる問題
チクセントミハイのフロー理論 挑戦課題の難易度を縦軸とプレイヤーのスキルを横軸として表現。スキルに対して難易度が高すぎれば不安に、低すぎれば退屈になり、その間にほどよい領域=フローチャンネルがある。
とはいえゲームによっては自明な作業の機械的反復に魅力があったりする。
挑戦課題の一貫性についての慣習
一つのゲーム内で提示される諸挑戦課題はある程度の一貫性があるという慣習がある。
つまり基本的なレパートリーをベースとした応用で対処可能な挑戦課題群であるということ。
『StarCraft』ではユニットの生産や部隊編成など基本的な手法は一貫している。
『Defender of the Crown』は馬上槍試合や奇襲などのミニゲーム集である。上記と異なり一貫性が薄いが、一つの虚構世界を描くということで紐帯を保っている。(太閤立志伝みたいなイメージ)
『メイドインワリオ』は諸ゲームの種類とそれらをプレイするのに必要な手法を特定するというメタなレパートリーをベースとしている。
ルールの楽しさ
ルールはアルゴリズム的で一意に確定できるものである必要があるが、戦略には幅がゲームはつまらない。ルールとプレイヤー戦略の相互作用がゲーム。ゲームは型にはまらないinformal経験を与える形式的なformalなシステムである。