J・ヒリス・ミラー『文学の読み方』を読む(第六章)

第六章 比較による読み方、あるいは骨折り損をすること

  • 『スイスのロビンソン』の前後

本作をネタ元たる『ロビンソン・クルーソー』とアリスシリーズを比較する。

  • 修正主義批評としての『フォー』

更に『ロビンソン・クルーソー』をクッツェーの『フォー』と比較する※邦訳は『敵あるいはフォー』のタイトルで白水社から出ている。

『フォー』はロビンソン・クルーソーをネタ元としたメタフィクショナルなポスモ的小説。フォーがめっちゃおもしろそうなので脱神秘化しないようにこの読みの部分はここでは割愛。どうしてもこの種の作品はポストモダン的と言ってしまうが、文学・物語へもしくは読書への懐疑といった複雑な語りは『ドン・キホーテ』『テンペスト』などに既に表れていることには注意。

如何なる真実の物語にも、その中心には近づくことを許さない沈黙というものがあるのだ。これはブランショが書いているセイレーンのあの沈黙に幾分似ている。  p.168

  • 文学と知の歴史

上記の四作はそれぞれジョージ1世時代、ロマンティシズムの時代、ヴィクトリア朝全盛期、現代と布置されているがある直線状に位置されていると著者が捉えているわけではない。そもそもある作品が、特定の時代・場所に典型的な作品であるなどと言えることがあるのだろうか。とはいえある作品を理解するのにその知的文脈を把握することは有益である。(この点に関しては『読んでいない本について堂々と語る方法 (ちくま学芸文庫)』にも書かれていた。それぞれの作品がどのようなユニバースを形成しているのかを知るということ。まあ言ってしまえば文学史を学ぶということになるのでしょうが。ハウツー本みたいなタイトルをしていながらとても熱い本です。文庫化もされたようだったとてもおすすめです。)

そのあとは『スイスのロビンソン』を例にロビンソン・クルーソーをいかに修正したものかを解説

このあたりは『スイスのロビンソン』を中心に各作品と比較しながらのレント読み実例この本で一番熱いとこだがその性質上割愛する

  • 結論としての素朴な読みの賛美―それができればおみごと

いずれにせよまずはアレグロで読むこと。そのあとでレント読みが良いだろう。(理想としてはさらにもう一度アレグロか)

 

◆まとめ

わりともったりした箇所もあったが、特に三章・六章は面白かった。基本的に具体的作品に対する考察をすると面白くなる人なのかもしれない。とりあえずクッツェーのフォーとブランショは読むことにしようと思いました。あとどうでもよいが、著者のファーストネームイニシャルのあとピリオドにするか、中黒か迷いました。英語的にはピリオドだろうが、日本語表記としては少数派な気がしました。おしまい。

 

文学の読み方

文学の読み方