平田オリザ『演劇入門』(第四章)を読む

第四章 俳優は考えるコマである。

 

著者の劇団員の採用基準は

 一つは、コンテクストを自在に広げられる俳優。

もう一つは、私に近いコンテクストを持っている俳優

そして最後に、非常に不思議なコンテクストを持っている俳優。

 優れた俳優は伸縮自在なコンテクストを持っている。

一、自分のコンテクストの範囲を認識すること。

二、目標とするコンテクストの広さの範囲をある程度、明確にすること。

三、目標とするコンテクストの広がりに向けて方法論を吟味し、トレーニング を積むこと。 p.160

 言語と同様に身体のコンテキストもある。

演ずるということは自分のコンテクストと演ずべき対象のコンテクストのすり合わせであり、

演劇を創るという行為は、仮想の時空間、仮想の世界、仮想の共同体を紡ぎあげる行為である。新婚夫婦の喧嘩の例で解るように共同体の形成には時間が必要であり、その時間とは、コンテクストのずれを摺り合わせていく時間だと言える。 p.169 

 現代演劇は近代演劇への批判即ち、ロゴス→パトス/エロス優位へという流れである。

主体性の効果範囲を明らかにすること

「コンテキストの共有」という言葉は、演劇にとって二重の意味を持つ。

一つには「他者との対話」を中心とする演劇の構造上、舞台上、すなわち演劇作品の内部において、コンテキストの共有がまずもって要求される。

もう一つは、演劇を創る上で、俳優と劇作家の関係、俳優と演出家の関係においても、コンテキストの共有が要求される。演劇が集団で、言葉と、人間の身体を用いて行う表現活動である以上、コンテキストの摺り合わせを 避けて通ることはできない。 p.186